今回は発達障害の人がどのように承認欲求を満たそうとするかについての内容です。
欲求段階説
欲求理論についてはマズローという人の欲求5段階説が有名で、人間の欲求を5段階の階層にして「下位の欲求が充足されると上位の欲求が生まれる」と定義したものです。
トンプソンはマズローの欲求階層説に基づき、欲求概念を「交流欲求」「承認欲求」「影響力欲求」の3段階で表しています。
基盤になるのが交流欲求で、誰かとある程度つながりが得られると、承認欲求が起こります。そしてある程度他の人から認められて承認欲求が満たされると、今度は他の人に働きかけ影響を及ぼしたいという影響力欲求が起こるというわけです。発達障害のある人は交流欲求の満たし方に問題があるようです。というのも発達障害のある子は愛着障害を併発しているケースが多くみられるからです。
愛着障害の特徴
乳幼児期に養育者と適切な愛着を形成できないと、情緒面や人格面などに問題が起きます。具体的には2つのパターンがあります。
1.反応性愛着障害
①人に対して過度に警戒をする
②親と極端に距離をとる
③親に抱きついたり泣きついたりしない
④笑顔が見られず無表情なことが多い
2.脱抑制型愛着障害の特徴
①過度になれなれしい。誰に対してもべったりくっつく
②自分に注目してほしいために乱暴な行為をする
③知らない大人に抱きつき、慰めを求めたりする
これらの反応が起きる原因としては
①養育者の愛情不足
②養育者の日常的な感情衝突(夫婦の不仲)
③養育者の死別・離別での愛着対象の喪失
④養育者からの虐待や育児放棄等のネグレクト
⑤離婚再婚の繰り返しによる養育者の頻繁な交代
などがあると言われています。
発達障害者は親も幼少期に愛着障害を抱えていたり、人間関係的に生きづらさを抱えていることが多く、その矛先が我が子に向けてしまうということが多いそうです。私は発達障害のASDの診断は受けていないのですが
「上司や同僚から自分がどう見ているのか気になる」
「この距離感だと疲れる」
「締切りに間に合いそうもなく困っているけど相談できない」
「上司のような緊張感を持って接する相手に対して表情が異常に固くなる」
というのがASD的な気質なんだろうなと何となく思っていました。
でも愛着障害という言葉を知ったときに反応性愛着障害の特徴の①~④にすべてヒットしていてハッとなりました。
小さいころに人間関係上手く立ち回れない度に怒られていたのでこうなっていたのでは?
と。では、私はどう接されていればよかったのでしょうか?
交流欲求・承認欲求の満たし方
交流欲求
私は滅多に褒められることがなかったのですが、テストでいい点を取ったり、児童会の役員になったときには褒められました。人間関係以外のテストや役員という「結果」を示すことで交流欲求を満たそうとしていたのかもしれません。でも交流欲求は結果を出したときに満たされるのではなく、
その人が自発的に何かに取り組んでいるときに褒める
ことが必要なのだそうです。こうすることで自己肯定感が上がり、次の承認欲求の次元にたどり着くはずなのですが、そうされなかった私はいつも叱られるのではないか?という不安に押しつぶされそうな気持ちで生きていました。特に学校でいじめられていたは誰にも相談できず居場所のない気持ちで一杯でした。だから
家庭で頼ることができなければ学校の先生でもよかったのかもしれませんが、そういう先生がいなかったか見つけようという気力が私にはありませんでした。もし親でも先生でも不安や悩みを打ち明けたときに
「辛かったね。話してくれてありがとう」「私はあなたのことを信じているからね」「弱いままでも大丈夫」
と言ってもらえればもう少し自己肯定感を持てたのかもしれません。
承認欲求
承認欲求を満たす声かけでは先ほどのような「結果だけ褒める」はもちろん、交流欲求ではOKだった「努力を褒める」が加わったとしても不十分です。承認欲求は
結果・努力に加え「能力」も褒めることで満たされ、自己肯定感が向上する
と言われています。この場合の能力は単なる形式的な結果ではなく、具体性を伴うものであることが必要です。例えば、いつも部活でレギュラーに入れなかった人がレギュラーになれたときの褒め方は、以下のようになります。
「レギュラー入りおめでとう、よく頑張ったね」(結果)
だけでは承認職級が満たされません。
「日々の練習以外に毎日30分自主練をして、苦手なシュートを克服したんだね」(努力)
と言い、さらに
「他のメンバーと打ち合わせをして点を取れるパターンを増やしたね。アイデアを実現できる実行力があるね」(能力)
という感じで褒めます。
これは何か大きなことを達成したときだけではなく、人への気づかい、約束を忘れないこと、話し方の丁寧さ、等少し努力すればできることであっても、有効だそうです。そうすることで人の承認欲求は満たされ、相手と自分との距離が縮まっていきます。
愛着障害を抱えた子は、自分が親になったときに同じ愛着障害を引き起こす虐待をする可能性が高くなると言われています。しかし親を反面教師と捉えたり、良い教師・伴侶との出会いにより、人を信じる力や自己肯定感を上げていける方もいます。もしお子さんがいらっしゃる方には「努力を認め」「認めてほしい部分を褒める」ことで、自己肯定感を上げていただければと思います。