私は人の顔色に敏感というか表情や声のトーンで「何か不機嫌なコトあったのかな?」「口調は普通だけど怒ってるな」とかいう雰囲気を察するのが得意なんですよね。でも気づいたうえで気の利いたことを言うのは苦手で、基本的に私は怖い人を見ると立ち向かうのではなく逃げたくなるビビりなので、サッとその場を離れるか、その人の気分を良くしようとお世辞を言うのですが、言動が露骨なのか結局怒らせてしまうことが多いんですけど・・・
たまに不機嫌になるってことは誰でもありますが、なぜ人は不機嫌になるのか?という怒りや攻撃性がどこから来るのかという根本的な問いに対する答えを示してくれた本を読んだので、今回はそのことについて書いてみたいと思います。ちなみにその本は「すぐカッとなる人びと(クリスチャン・ザジック著」です。
なぜキレるのか?
些細なことで反論ならまだしも瞬間的にキレる人っていうのがこの世には存在します。私はキレる人が苦手なので、幼少期からそういう雰囲気の人にはピンときたらすぐに離れようとするのですが、なぜか私がターゲットとなり矛先が向いてしまうという・・・キレてる本人も無自覚な時が最悪なんですよね。
何のためにキレるのか?
キレる理由は諸説ありますが、衝動性理論(快楽のため)というのが有力です。精神科医フロイトによれば衝動=攻撃衝動であり、局所的な肉体的興奮に根源をもつ内発的なもので快楽の原理に従って獲得する「安堵と満足」なんだそうです。つまりキレている本人は快楽を得ているわけですよね。無自覚にキレる人がいるのは、快楽を求めてキレるってことを知らないからなのです。内発的なものなので理性より先に怒りが表に出てしまうので、キレてしまった後に「やってしまった……」と後悔する人もいますが、キレるときに気付けないので周囲の人にはいい迷惑です。
他に怒ることで欲求不満状態を開放するという説もあります。パーコヴィッツによると溜まりに溜まった欲求不満の壺を、他の誰かが触れてこぼす事によって攻撃衝動にスイッチが入り、キレるというものです。ただ現在は欲求不満の一形態がキレるという行動というだけでキレる理由にはならないという考えが主流なようです。
攻撃性は何の役に立つか?
1)縄張り本能:アユの縄張り意識のような同種のメンバー内での力の序列の維持(周りを威嚇するために意図的に怒りを表に出す)
2)ヒエラルキー維持:クラスのカーストのように社会的な組織機能(組織の構造を崩すメンバーの排除や無力化)
3)性的淘汰:戦いにより残った最も強いオスがメスと交尾すべきとの生物的本能(優秀な子孫を残すための淘汰)
人間以外の動物は1~3ですが、人間界では1と2ですかね。結果的に3もあるという考え方もありますが(例:金を稼げる男がモテル女性を妻にする可能性が高い)そして動物にはすべてある三大欲求という食欲・睡眠欲・性欲と似たような概念で、四大本能という言葉があり(ローレンツが提唱)①食欲②生殖③攻撃④逃走というのがあり、攻撃は本能と捉えられているんです。役に立つというか生きるために必要な本能なんですね。
キレやすい人の特徴(ホルモンが関係)
(ホルモンバランスが崩れる)生理前にイライラする、という女性の言葉を聞いたことがありますが、確かにキレやすさにホルモンは影響します。
増えるとキレにくくなるホルモン
・セロトニン:衝動性を抑制する。少なくなるとキレやすくなる。
・GABA:攻撃衝動を抑制する。少なくなるとキレやすくなる。
・エンケファリン:攻撃衝動を抑制する。
増えるとキレやすくなるホルモン
・ノルアドレナリン:攻撃行動を促進する。増えるとキレやすくなる
・ドーパミン:行動の目覚めに作用を及ぼす。攻撃性の優位な人はキレやすくなる
・アセチルコリン:増えると感情的な反応が高まる。攻撃性と相関性がある
発達障害があるとノルアドレナリンを増やすストラテラ(アトモキセチン)、ドーパミンを増やすコンサータを飲んでいる人も多いと思いますが、これは同時にキレやすさを増しているとも言えるんですね。私もストラテラ飲んでいるので気を付けないと・・・逆にセロトニンやGABAを体内に取り入れるとキレにくくなるんですね。定期的に外出して日光に当たるのはセロトニン生成に大事です。GABAについては最近チョコレート菓子などで有名になっていますが、GABAを含んだ食品を摂っても、脳で神経伝達物質として使われないのであまり意味がない、という考えが残念ながら主流です。
どのように攻撃性に対応するか?
キレる当事者(攻撃性を抑制するには?)
怒りのメカニズムを意識しましょう。怒りの大部分は①欲求不満→②怒りの感情→③攻撃行動として現れます。
①欲求不満:ストレスを抱えている場合はそれが何かを意識し、対処する(減らす、取り除く、浄化する)ことで、怒りの感情を防ぐことができます。
②怒りの感情:欲求不満が消えない場合は怒りの感情が発現しますが、自分の立場を建設的に伝えたり、考えることで対外的な怒りというのを回避することができます。例「承服しかねる要求にノーと言う」「自分の空想の中で相手の気持ちを決めつけない」
こうすることで結果的に③の攻撃行動を減らす、排除するわけです。(自分の身を守ったり安全を確保するために、攻撃行動が必要なときもあるので全てを0にする必要はありません)
周囲の人(キレる人にどう対処するか?)
上記の①欲求不満→②怒りの感情→③攻撃行動ですよ。と教えて上げれればベストですが、世の中そう理解度のある人ばかりではありません。なので以下の対処法が必要でしょう。
1.正当な反論
キレる人には批判やキレるなという要求をしてもいいのです。その際に正当な反論の作法を覚えておきましょう。
①問題の定義:相手のキレる理由の確認、自分の受ける不利益
②自分の感情:不利益の結果、「自分が」どういう気持ちになるか
③提案:解決策や譲歩案の提示
例「なぜ期日に書類を提出しなかったんだ?しかも完成度が低すぎる」
「期日に遅れているのは確かです。でもあなたは皆の前で私を叱っている。」
「それがどうした?」
「他の人に聞こえるように叱られると私はとても傷つきます」
「書類を期日に提出しなかった理由がそれか?」
「いえ、問題があったら皆の前ではなく、個別に私に直接伝えてほしいのです」
番外編としてこういうのもあります。
・壊れたラジオ:理不尽で自分に非が全くないのにキレてくる相手に、自分は無関係であることを延々繰り返す。なお上記の①くらいは加えても可です。
例「この部屋なんで汚れているんだ?」
「確かに汚れていますね。でも私は知りません」
「そういうことを言っているんじゃないんだ。汚れているのは問題だろう!」
「そうですね。でもこれを汚したのは私以外の誰かです」(以下相手があきらめるまで延々と繰り返す)
2.回避策
反論できる精神的な強さがある人ばかりではりません。また反論してもキレやすい人に限って反論を冷静に聞いてくれないものです。相手をヒートアップさせないためにも欲求不満や怒りの感情に触れないよう対応するという選択もあります。
① プライドが高い・ナルシスト
自尊心を人一倍高く持って生きている人は、自分の価値観に外れた評価をされると、自分が劣った人間だと指摘されたように受け止め、屈辱を感じてしまいます。周囲が軽い冗談で言ったことにも過敏に反応しキレてしまうこともあるので、本人のプライドや美意識に触れないような言動に注意しましょう。こういう人はえてして周りからけなされないように、先にキレておくことで自分を守っている一面もあるので分かりやすいです。
対処方法(地雷さえ踏まなければ害はない)
● 不用意な発言に気をつける
● さらっと流す
② 自分の正しさを疑わない(価値観固定)
視野が狭く、自分の考え方や価値観が常に正しいと思っている人は、人の考えが自分と少しでも違っているだけで怒りを出してきます。人や物事の評価を自分の物差しでしか推し量ることができない(したくない)タイプなです。この手の人も周囲から浮いているところがあるので分かりやすいです。
対処方法(相手からの被害を受けないように無難に切り抜ける)
● 自分が敵ではない旨を伝える
● 全面肯定しない程度に立てておく
③ 自分が注目されたい(裸の王様)
カーストのボス的な存在で、自分が中心となり方針を決めて人を動かしたいタイプです。根が王様なので思い通りにならないとキレて周りを支配しようとします。自分に不利益なことだけでなく、利益を逸することも許せないと感じるので、事前に報告や相談がない場合も「なんで私に言わないんだ」とキレます。上司や偉い人に多く①との混合型も多いです。なお力関係には敏感なこのタイプは「自分より格が上だ」と認識している人にはキレません。
対処方法(理不尽なことさえなければいいや的に対応が吉)
● とりあえず話を聞く
● 毅然とした態度に出る(相手に自分が格上だと思わせられる場合に限る)
最後に
精神疾患など病気の症状としてイライラしやすい、興奮すると抑制できない、という人もいます。性格的なところや意図的に当たりたいがためにキレている場合はさておき、本人にもコントロールできない部分で苦しんでいる可能性もあるので、キレることを許すまではしなくてもいいですが、「もしかしたら病気なのかもしれない」ということも想定しておくといいでしょう。ちなみに私が休職したときの先輩はこのパターンだったことが復職後に分かりました。だからって許す気ないですけど。
あと振り回されすぎないことも大事。キレる人に生活リズムを乱されたり心がその人のことで一杯になってしまうこともあると思います。そんな人と一緒にいることで気を遣って生活・仕事するのは疲れます。必要な場合は職場のコンプライアンス部署や学校の先生に相談して必要なアドバイスをもらいましょう。私は冒頭に書いた通り露骨でも何でもいいのでサッと逃げますが。