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NO.50(書評)本多勝一:中国の旅

投稿日:2020-08-21 更新日:

中国の旅 (朝日文庫)

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賛否両論ある本

この本はルポライターとして朝日新聞記者の著者本多勝一氏が太平洋戦争時の中国の様々な街を周り、日本軍の被害者(暴力を受けて生き残った当事者や殺された人の家族)となった中国人からのヒアリングをまとめて朝日新聞に掲載したものをまとめた本です。

著者の本多氏が「KY事件」(自作自演で傷つけられたサンゴ礁のスクープ撮影を行った記者)の張本人だからということもあるでしょう。真偽を問うサイトも多く、いくつかは時系列的に辻褄の合わない記載や軍用犬が中国人を食べるような事実か疑わしい記載もあるようです。

でもこの凄惨な日本軍の行為を描写した表現すべてが嘘とも思えず、むしろかなりの現地での真実の言葉が記されているのではないかと思うのです。また中国は世界でも有数な言論統制の強く、自由な発言が制約され、反政府的な言動を行った人は容赦なく投獄されまたは秘密警察に常時監視されるなど徹底的に弾圧される国で有名ですが、この礎は太平洋戦争時代に日本軍が行ったことを踏襲しているだけではないか、と思うような記述が多いのも特徴です。

日本軍は何を行ったか?

戦争とは常に侵略する側が侵略される側を蹂躙する形をとりますが、まずはこの本による日本軍(関東軍)が行った行為を3つの視点で分けるとこんな感じです。暴力国家といった感じです。今でも日本人に仇と憎しみを持つ中国人がいるというのも納得な気がしました。

1.経済的な征服
(1)重税:約20種類にわたる税(営業税・所得税・人頭税・雇用税・家畜税・犬税など)で中国人の財産を奪う。犬税は犬を飼った飼い主に課す税だが、それだけはなく首輪に飼い主の名前を書くという中国人の文化的には屈辱的な事も強いた。労働者は所得税と雇用税の両方を支払うことで実質の手取りは半分になっていたそうです。

(2)賄賂の要求:正月や節句に警察・憲兵・特務機関に付け届けをするのは当たり前、3.で記載する政治犯・経済犯などで逮捕された身内の釈放手続きも賄賂が要求されますます財産を失っていく。なお以下で述べる強制労働を逃れられた裕福な中国人も軍隊にせっせと賄賂を贈り「特赦」を受けたそうです。まさに地獄の沙汰も金次第ですね。

2.精神・肉体的な征服

(1)強制労働:農繁期など中国人の都合は関係なく、日本軍の命令で中国人は工場や鉄道関係の労働に駆り出され1日12時間の立ち仕事など過酷な労働を強いられたそうです。ちなみに食事は家畜用の餌で月給も雀の涙程度で労働に見合った額は貰えなかったそうです。
過酷な労働条件の炭鉱で働く人は病人になるものが多かったのですが、炭鉱では病人を1~3のランク分けをして自力で動けない重病人のテントは「防疫」という理由でテントごと焼かれたそうです。労働者の多い鉱山では同様に過酷な労働や鉱物中毒による死人も多く、発掘された化石のように大量の骨が地中に埋められていたそうです。

(2)暴力:徴用先から逃げ出した者がリンチを受け、手当てもされないまま死亡する者も多数いたそうです。中国人を徴用していた工場では「三八打制度」というものがあり、工場の決めた38のルール(私語をした、政治の話をした、仕事中に日本語で話さない、中国人とは分けられていた日本人のトイレを使った)に違反すると殴られる。こん棒で殴られ死ぬ者も珍しくなかったとか。死んで初めて「クビ」扱いになったそうです。

(3)人体実験:死刑囚を使った腸チフスワクチン開発のための人体実験、死人ではなく生きた人間を使っての人体解剖など細かく書けない内容多すぎです_| ̄|○

3.政治・文化的な征服

(1)弾圧機関による言論・思想統制:3人集まって話をすれば思想犯、食うに食われずヤミ市を開いたり贅沢とされたコメを食べれば経済犯、警察や憲兵に文句や意見を言えば政治犯と徹底的に逮捕、投獄された。大半がでっち上げであり、日々続く暴力や人への物と思えない粗末な食事で病気になり死ぬ者も多かったそうで日々収容されるのに監獄は満員にならなかったとか。取調室のほかに自白を強要するための「拷問室」もあったそうです。

(2)教育統制:国語は日本語、歴史教育から中国の歴史は消され、中国史=満州史、東洋史=日本史となる。音楽は君が代と満州国国家、道徳では教育勅語を覚えさせられました。目的は文化伝道ではなく支配でしたので日本語を覚えない中国人の子供は反日分子とみなされ体罰が横行していたそうです。祖国という概念を忘れ去れるための奴隷化教育とも言えますね。

(3)文化統制:満州の至る所に神社が立てられ敬礼させられる。一般の書物は検閲され焚書による650万冊以上の本が焼かれた。マスコミ(新聞社・出版社)の社長や編集長は日本人で占められていました。

(4)その他:中国人による中国人に対する監視活動で相互の不信感をあおり脱獄をけん制させたり、過酷な労働環境にある徴用されけがや病気などで衰弱した労働者をアヘンでハイにさせ一時的に回復させて更に労働に駆り立てたこともあったようです。まさに北朝鮮でやっているのと同じことですね。

最後に判断するのは自分

正直自分もどこまでが真実でどこまでがフィクションなのか分かりません。また真実ではあるものの、一部の劣悪な場所の話もあるのかもしれません。でも描写の細かさや説明の納得度(現在の中国や北朝鮮など一部の独裁国家で聞いたような話を読むにつけ)からすると7~8割は事実なのだと思っています。

読み終わって残った気持ちは「人が人を差別・支配しようとする気持ちは古今東西変わらないのだな」というものでした。現代に生まれたことを感謝すると共に、状況は人はこういう風に変えるのだという事を肝に銘じておきたいと思います。

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