今回は発達障害特性に関する論文の解説です。発達障害のお子さんがいる方向けに思春期以降どうやってお子さんと向き合っていくかの参考になれば幸いです。今回の論文はこちら(発達障害児の思春期以降における問題行動の調査研究)です。
ダイジェスト
①思春期以降に減少する行動 | 多動・偏食・奇声・パニック・他害行為・睡眠障害 |
②思春期以降に増加する行動 | 過食・チック・自慰等性的行動 |
③思春期前後で変化のない行動 | 強迫的なこだわり・自傷行為 |
食事については偏食は年と共に治まるのに対して過食は18歳以降増えていくのは興味深いですね。
性的行動というのは思春期を迎えれば定型発達の子でも生まれる感情ですが「好きな対象の子にさわる」という直接的な行動に出てしまう点が問題になるそうです。特に親の悩み・不安で一番気になる行動がこれで、特に男の子の場合だと「女性を襲ったりしないか」「自分の性器をところ構わず触ったりしないか」、女の子の場合だと「いたずらされないか」でした。
性の問題にポジティブに対応した例としては
・夫の協力を得てスポーツで発散させた
・性への興味は当然であるので、自慰の処理の仕方を教えた。
というのがありました。家庭・学校で協力しての教育が大切だとのことです。なおその他の意見として
・異性への特別な感情の気配が感じられない。
・未だにそういうこと(自慰など)がなくて心配
というのもありました。
全ジャンルを通じて、問題行動が大きく減少しているお子さんの特徴の特徴が載っているのですが、
①自閉傾向(ASD)が強い
②精神遅滞がある
③親などに厳しくしつけられている、または感情的にならず本人の気持ちを大切に冷静に対処する
のだそうです。うーん、③は前者と公社で両極端ですね。前者の厳しくしつけるは問題行動が大きく減少する以外の別の問題が出てくるような気がします。
問題行動が減る要因としては、言葉の発達が大きいみたいです。つまり幼少期で言葉で自分の意見を言えなかったお子さんが年齢を重ね言葉で自己主張ができるようになり問題行動が減る、という理屈です。これは自傷や他害行為の改善でよく見られるそうです。なのでお子さんの育て方のポイントとしては
・言葉で意思疎通を図る(通じないからと言って行動で訴えない)
・自分の意見を出させる(人がどう思うかを気にせず)
・善悪を言葉で理解させる(力や大きな声ではなく)
点を意識すると良さそうです。
あと趣味を持たせるのが良い、という意見が随所にありました。特に自閉傾向(ASD)のお子さんはパズル・パソコン・スポーツ・囲碁・将棋などのめり込めるものがあると一人でどんどん習得していくので、それが問題行動の減少に一役買う、という意見もありました。本人の自己肯定感やプライドを育てながらゆっくり成長を楽しむというのも親の喜びですね。