コロナ禍によるストレスで心身の不調を訴える人がコロナ前に比べて増えているというニュースを見ます。体調・メンタル不調は早めに病院にいって治療を受けて治した方が良いのは皆さん分かっておられることだと思いますが、今回は会社員やアルバイトなど雇用されている人が働けなくなったときにもらえるお金についてお伝えしたいと思います。(経営者や自営豪はこの対象にならないのでご注ください)
Q1.どんな給付金があるか?
要因 | 給付金(制度) | 受給金額の目安 |
業務外の病気やケガ | 傷病手当金(健康保険) | 給与の2/3程度 |
業務中の病気やケガ | 休業補償給付(労災保険) | 収入の8割程度 |
会社の休業 | 休業手当(労働基準法) | 給与の6割以上 |
1.傷病手当金
業務外の(既往のメンタル疾患やプライベートな)病気やケガで働けなくなったとき、協会けんぽや企業の健康保険組合から支給されるのが傷病手当金です。週30時間以上(従業員501人以上の会社は20時間以上)勤務すればパートタイマーでも健康保険に加入できるので、この制度を使えます。
傷病手当金のポイントは
①3日以上連続して職場を休む(土日祝日も1日にカウントします。ただし途中で勤務した場合はNG)
②勤め先から給与を支給されない(給与が傷病手当金より低ければ差額を支給されるが満額以上支払われたらNG)
です。そして傷病手当金の支給額は
標準報酬日額の2/3です。例えば月収30万円の人が60日間休んだ場合は、標準報酬日額=30万円÷30日=1万円となり、支給額=1万円×2/3×(60日-3日*)=約38万円が支給されます。なお支給額の上限は30,887円/日です。
*最初の3日間は傷病手当の支給期間にカウントされない
なお企業の健康保険組合の中には更に上乗せで追加給付がある場合もあります。傷病手当金については、こちらのリンクが分かりやすいですが、会社の人事部門や健康保険組合にも確認しましょう。
2.休業補用給付
業務中の病気やケガ(パワハラや工場作業中でのケガなど)で休んだときは労災保険から休業補償給付が支給されます。
なお新型コロナでは感染経路が業務によるものであれば給付の対象となります。ただし本人と会社とで感染経路の認識が一致しない場合(往々にして会社は自分の責任を認めないものなので)は、労働基準監督署が判断します。医師や看護師、介護従事者の感染では業務外感染が明らかな場合の除き、原則労災保険適用の対象となっています。
3.休業手当
コロナで売り上げが減り、勤め先が休業したときは従業員が働けても給与をもらえません。そこで支給される可能性があるのが休業手当です。労働基準法では「使用者の責任による休業の場合は、使用者は平均賃金の60/100以上を従業員に支払わなければならない」と定めています。現在は政府の方針で営業自粛や営業時間の短縮を求めている業界(飲食店など)もあるので、そういうところはこの休業手当が支払われる可能性が高いです。
なお休業には至らないが、お客が減るのでシフトを減らしながら従業員の雇用を維持する会社に対しては国が雇用調整給付金を支給します。これも大枠としては休業手当と考えてください。
Q2.どうやって申請するか?
どの給付も会社(人事や総務関係の部署)が手続きをするケースがほとんどです。傷病手当金であれば健康保険組合や協会けんぽのホームページから様式をダウンロードすることも可能なので、お持ちの保険証で健康保険組合等の名前を確認して試してみてください。
Q3.職場で実際に想定されるケースは?
企業はコロナ前から人員の非正規化や業務の外部委託を進めており、特に雇用の調整弁とされた非正社員と呼ばれる契約社員やパートタイマーは厳しい立場にあります。緊急事態宣言時ほどではありませんが、取引や業務量の減った企業では人件費削減のため非正規社員を中心に休業を命じるところが増えています。
1.経営が苦しいから、「明日から来なくてよい」と言われた
民間企業および地方公務員でも非正規労働者の場合は労働基準法が適用されます。会社都合で労働者が休業となった場合はQ1の3.のとおり平均賃金の60%に当たる額の休業手当が支払われます。ただし以下の点に気を付けましょう。
(1)休むように指示された場合
本来は出勤日なのに「この日は来なくていいです」と会社から休みを命じられた場合は労働者は働いていなくても、その日の休業手当を請求することができます。そして1週間・1か月など一定期間の休みを命じられた場合は、その期間の出勤日全てに休業補償の請求が可能になります。
(2)自分の意思で休む場合
会社は休みではないですが、微熱などの症状があり働くことで他の従業員やお客さんに感染させる危険がある場合です。この時の対応は2つあり、①年次有給休暇(年休とか有給とか言います)とQ1.1.で説明した傷病手当金です。これは「業務外の病気やケガで休業すること」「仕事に就くことができない」「連続する3日間を含み4日以上仕事に就けない」などが要件ですが、もし業務中に社員やお客さんから感染するようなことがあった場合は業務外ではなく、「業務中の病気」になるので、Q1.2.で説明した休業補用給付の対象となります。
①の年次有給休暇(は休暇を取得しても給料が支払われる法律上の制度、で詳しくはこちらのリンクでご確認ください。労働者が休む日を自由に決めることができるので会社は基本的に拒否できません。年休が残っていない場合は、欠勤となりますが病気にかかっているのであれば②傷病手当金の制度を利用できます。
2.今、仕事がないので、次の更新はしない」と言われた場合
新型コロナウイルスの拡大で飲食業を中心に営業停止や営業時間の縮小を余儀なくされる会社が増えます。こういう状況では1回の契約が6か月間等、労働契約期間の定めのある有期雇用者が雇止め(会社が契約更新を拒否する)を受けるリスクが高くなります。「会社が言うなら仕方ないか・・・」と諦めるのは早いです。労働契約法では、労働者が更新されるものと期待することに「合理的理由」がある場合など、一定の要件のもとに、「雇止め」を認めないケースもあります
有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(厚労省)
参考にしたのは労働組合組織として名高い連合(日本労働組合総連合会)のQ&Aサイトです。ここでは厚生労働省の基準が出ています。(厚労省の通達なので、法律ではありませんが、労働紛争になったときの解釈の元になる考え方です)
雇止めに関する基準 雇止めをめぐるトラブルが多いことから、使用者が講ずべき措置について厚生労働大臣が基準を定めている(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)。
[雇止めの予告] [雇止めの理由の明示] [契約期間の配慮] |
ご自身の契約が通算で1年以上、そして3回以上更新されている場合、雇い主は30日前に予告をしなければいけません。また契約を1回でも更新し、かつ1年を超えて継続して雇用されている人に対して、雇い主は契約期間をできるだけ長くしなさい、とも書かれています。同じ勤め先で1年以上働いている人は、そのことをもって「私は厚労省の通達にもとづき、もっとここで働かせてもらうよう要求します」と主張しても全然OKなのです。言うのはタダですし、雇い主側もこの基準をしっかり頭に入れていない可能性もあるので言ってみましょう。
おまけ話
会社で人事の仕事をする中で障害者雇用を法定雇用率以上にするよう管理しているのですが、今までは障害者の方を雇う事ばかりが頭にありましたが、障害者雇用促進法を調べる中で以下の条件があることを知りました。
1.法定障害者雇用が達成できない場合は、障害者就労施設からモノやサービスを購入することで間接的な雇用を実現する。
2.本人が障害者手帳を持っていなくても実質で判断する。(みなし雇用)
企業って割と障害者雇用の目的を法定雇用率の維持に置きがちですが、本当に障害者福祉としての雇用を考えるのであれば、手帳のない発達障害やグレーゾーンの方の採用、社外への発注(福祉作業所や就労支援施設)も考えようと思いました。これだって障害者雇用という結果であり、人を大切にすることなんですよね。